

第42代理事長 平井 義一

学生時代は地方で一人暮らしをしていました。道を歩いていても、スーパーに買い物に行っても、誰一人知り合いには会うことはありません。人生において初めての衝撃です。数ヶ月で恵庭が恋しくてたまらなくなります。横断歩道に設置されている音響装置付信号機から、唱歌である故郷(こきょう)の空」が青信号を知らせるメロディとして流れました。心の中で歌詞を噛み締めました。
夕空晴れて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫鳴く
思へば遠し 故郷(こきょう)の空
ああ、我が父母いかにおはす
ふるさととは遠くに来て思うもの、とよく聞きますが、このまちを離れたときに初めて、ふるさとの人の温かさなどに気が付くことが多いのです。
私が物心のついたときには、商店街の商店の息子という性格上、色んな商店に遊びに行き、そこの店主はもとより、常連のお客さんにまで、遊んでもらったり、叱られたりしていました。また夏休みになると8月第1週の週末の2日間、中心部商店街の道路は通行止めとなり、大勢の人で賑わう青空天国になりました。そこで開催されるすずらん踊りに、恥ずかしいけれども近所のおばさんにうながされてほぼ毎年参加をしました。また、お店の前のバス停のベンチに腰掛けて花火を観覧していると、知らないおじさんから一切れのスイカを貰って食べた記憶が、昨日のことのように思い出します。人と人とのつながりが、あまりにも当たり前過ぎていて、誰も意識をしていませんでした。逆に人との関わり合いを嫌がる人のほうが変わり者扱いされていました。
近年、世間様という言葉をあまり聞かなくなりました。世間様には2つの意味合いがあったと思いますが、1つは自らを律し戒める為の言葉でした。「世間様が見ている」「世間様を騒がす」「世間様に顔向けが出来ない」など、社会全体の中に個人である自分がいたのです。もう1つは実際に、近所のおじさん、おばさんから、将来、出来ることなら地元に残り、このまちをいま以上に盛り上げて欲しいなど、まちのために役立つ人間になれという旨の話を日常的に聞かされていたので、大人になったらまちのために漠然と何か活動をしなければならない気持ちが芽生え、それに対して何の疑問の余地もなかったのです。
この無意識の内に心の中に強く残る不特定多数の世間様との何気ない会話と、社会の一員であることを示す世間様が、ふるさと意識を持った人格を形成し、そんな世間様こそが心の支えになり、市民で賑わうイベントが思い出となり、地元の歴史が共通の認識を作り、誇れる伝統や文化が恵庭市民の一員であることを意識付け、恵庭・島松・恵み野地域それぞれの活動がさらに地元に根を植え付け、そしてこのまちで考えた大きな夢がふるさと意識の原動力となる。これらの要素が積み重なって交じり合い、日々の生活という定住でいっそう醸成され、そこから芽生えるふるさとに対する気持ちを『郷土愛』と呼ぶのだと思います。
郷土愛という共通の想いをまちのみんなが持つと、つながりの必要性を感じ、それが人情となり、人々は助け合い、まちの様々な課題にも真剣に向き合い、行動する。そんな互助の精神こそがまちづくりの原点だと思います。
また、ふるさととは、必ずしも生まれ育った場所ではなく、心の拠所であり、いずれは戻ってくる場所であり、思い出深い場所だと思います。自分にとって地域の事を思い行動し、思い入れ深い場所のことを指すのです。
《心に残る郷土の事業》
心に残る事業には、社会的に大きな役割があるのです。このまちの為に地域に伝わる伝統や文化の継承をしつつ、世代を越えた地域の人々との心の触れ合いをより深め、自分のまちとそこに暮らす人々への愛着を深く心に刻んでもらうことです。そのためには、我々メンバーが、恵庭に住んでいた先人達が残した有形・無形の遺産の中で、特に良きものや大切なものは何なのかを「いつまでも心に残る郷土の事業」という観点から大局的に考え、掘り下げ検討し、恵庭らしさを追求した中で、市民に伝え体験してもらう。そして自分だけではなく、子や孫までも恵庭に住みたい、住ませたいと対外的に言える確かな想いが強く育まれる、それが今後行われる事業の姿なのです。
《みんなでつながるふるさと》
インターネットはコミュニケーションツールとしても幅広く利用されています。しかし、文字や写真のやり取りでは最低限度の意思伝達方法にしかなりません。真のコミュニケーションは、相手と膝を向き合わせ、目を見ながら、会話の間合いを取り、視覚、嗅覚、聴覚に訴えながら、知覚、感情、思考を伝達し、相手とつながっていくことだと思います。
生きた魚を手にするには、自分で出かけて行き、うまく魚を釣り上げなければいけません。これと同じように、青年会議所やまちの情報を発信する為には、自らが動いて、みんなの考えを掘り下げ、言葉にしなければ本当に有益な情報にはならないと思います。一人でも多くの人と出会い、我々の運動や活動を伝え共感していただき、また自分の声をどう発信して良いか分からない市民や団体の考えを拾い、共に手を取り合って、組織の垣根を越えて考えることでつながりが生まれます。やがて市民共通の認識や共有の情報ができ、互いに頼り合う関係が生まれ、そんな関わりが郷土の想いを形成し、思い入れが芽生えるのだと思います。
すべての市民同士が意思疎通し、誰に対しても自信を持って誇れるようなまちの発信が出来る、みんなでつながっている郷土にするべきなのです。
また、事業や行事などを含めたすべてのLOMの発信は、このまち恵庭をイメージできるものを常に心掛けることで、我がまち独特の雰囲気を醸し出します。やがて、我が郷土と他市町村との違いがはっきりと認識できるようになります。そして「自分たちの住むまちは恵庭市なのだ」ということを自覚することによって、より強い郷土愛が育まれるのです。
《子どもの夢がふるさとを創る》
夢なき者に理想なし、
理想なき者に計画なし、
計画なき者に実行なし、
実行なき者に成功なし。
故に、夢なき者に成功なし。
幕末の志士、吉田松陰の言葉にこのような格言があります。自分は将来どうなりたいのか、何を成し遂げたいのか、原点にさかのぼって考える事が常用であるという意味ですが、大人たちは次代を担う子どもの夢について、何度でもしっかりと考えてほしいのです。
教育とは子ども達が社会の第一線で活躍するであろう、20年後の社会を見据えて行います。私も郷土を語るときに思い浮かぶのは小・中学生の、やはり今から20数年前の思い出です。このまちの明るい豊かな社会の創造のために、当時の先輩諸氏を始めとする恵庭に住む先人達が、みんなでまちの宝として子ども達を育てたからこそ、より鮮明に思い出深い心穏やかな郷土のイメージが形成されたのだと思います。しかし現在の子ども達を見てみると、社会でも地域での関わりが薄く、家庭でも時間に追われることが多く、教育でもゆとりを持たせ個性を伸ばすことを尊重するあまり、道徳的なことを軽んじた為、(小中学校の道徳教育は年間35単位時間)世間様を意識することが少なく、社会の一員という意識もあまりないように思えます。子ども達が将来どのような人生を歩もうとも、まずは自分の住むまちに興味を示さなければ、まちの為にみんなでつながろうという気持ちも起きず、互助の精神も芽生えず、無関心な子どもに育つように思います。その逆に、郷土を愛し、夢を大きく持つことが出来れば、このまちの活力につながるのです。
2012年度から「生きる力」を育む理念のもと、小・中・高校で新学習指導要領が順次全国で全面実施されます。これは「確かな学力」「豊かな人間性」「健やかな体を育む」ことを目的としています。当青年会議所では、3年前から、教育委員会の協力により「夢」をテーマとして取り組んでいますが、本年は 「郷土を誇れる、夢いっぱいの青少年の育成」を掲げ、夢あふれるこの恵庭に愛着を感じてもらう機会として学校教育や地域教育に積極的に関わっていくべきなのです。
《郷土教育が未来を創る種》
『過去から学び、今日のために生き、未来に希望を持て』
物理学者であるアインシュタインの言葉です。過去から何を学び、いま何に集中して、未来にどんな希望を持っているのか。過去、現在、未来についてどう意識しているのかを考えてみることが重要であるという言葉であります。
2006年に改正された教育基本法の教育の目的に「伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の発展に寄与する態度を養うこと」(教育基本法第2条5項)等が追加されました。この法律の本質は現政府に対する忠誠心を植えつけるものではなく、人々が暮らす共同体としての愛郷心を養うものです。それに伴い我々も、自分達の住むまちの歴史を知り、より思い入れのある郷土愛を育み、郷土への愛着と理解を重視し、郷土に具体的な教材を求めた教育や、発信を行う必要があります。
郷土を考えたとき、自分が生きていた年月の部分だけの思い出をもって、個々に想う郷土愛とすることに異論はありませんが、もう少し深く考えたときには、このまちを切り開いた先人達が未開の原野にクワを入れ、血の滲むような苦労を重ねながら、未来にどんな夢を思い描き、希望を語っていたかと想いを巡らせ、調べ、考えて、自分の思い出の出発点に繋ぎ合わせて欲しいのです。そして我々は次世代の人に何を残し伝えていくべきなのかも相対的に考え、綴って欲しいのです。過去から現在、そして未来を一つの線で繋いで、代々受け継ぎ可能で責任ある、語りつくせないぐらいの思いで深い郷土愛を醸成するべきなのです。
【会員拡大は活動の源】
全国各地の青年会議所は会員減少により、組織の維持、事業の継続などへの様々な問題を抱えており、中には解散を余儀なくされた青年会議所も出てきております。社団法人恵庭青年会議所の持続的な発展を考えた時に、会員拡大の必要性は明確になります。しかし、会員拡大は必要性のためだけにやむを得ず行うことではありません。恵庭の発展に寄与するために努力している私たちの運動の輪を広げ、同じ志を持つ仲間を増やすことは「明るい豊かな社会」の実現に近づくことになります。すなわち会員拡大は、青年会議所活動そのものであり、運動の根本に関わる事業であることから、その重要性も明確になります。
また、青年会議所は多くの経験を積んだ会員と新たに入会し可能性を持つ会員が、互いに磨き合うことで、地域に必要とされ、信頼される多くの人を育んできた。先達からいただいたこの循環を止めることなく、少しでも価値を高めて渡せるように、決して一部の会員で行うのではなく、全会員が積極的な関わりを持ち、会員拡大を展開していきます。
明確な数値目標を掲げ、目標達成に向けての会議を設け、会員一丸となり拡大を進めることで、確実に実績を上げていこう。それが私たち自身の活動への源となり、私たちの運動の発展へとつながるのだから……。
《つながりこそが我がふるさと》
昨年創立40周年記念メイン事業として、【えにわ夢ダイナミックチーム】を立ち上げました。40周年記念式典で発表した通り5ヶ年計画で行うものです。主旨は「子どもが変われば大人も変わる。そして地域も変わる」との思いで、地域とのつながりのある舞台や踊りを開催し、子ども達が自主的に演技を組み立て、稽古をし、みんなに披露するものです。当初9名でスタートしましたが、現在は(1月1日現在)14名の中高生が集まり、活発に活動しています。
2年目となる本年は、我がまちの礎を築いた先人達に焦点をあて、どんな夢や想いを巡らせこのまちを開拓し、そこにはどんな努力や苦労があったのか、そして現在の我々はその何を受け継ぎ、何を次代へつないでいくのかを考える教材として、歴史の舞台を開演したいと思います。また、友達が友達を呼ぶつながりや、父母が積極的に携わるつながりをさらに作るために、メンバーのより一層の募集を行います。
そして万全な体制の組織を青年会議所の枠を超えて作り、持続可能な運営方法を構築し、5年目以降は自主運営を目指します。そして将来必ず、地域のあらゆる人や団体と手を携え、このまちには無くてはならない文化にしたいのです。親から子へ、子から孫へ、脈々とその地域で継承され、子が孫へ伝える姿を、もう一世代前の親が見守っている、そんな光景そのものが、郷土芸能として根付く要因なのではないかと思います。目先の成功で量ることなく、そこにある本質を未来につなぐ、そこには郷土愛が生まれてくるのです。
《輝くLOMは心に残る》
「この世をおもしろくするのもしないのも、また、おもしろいと感じるのも感じないのも自らの『心』次第である」。維新の志士、高杉晋作の言葉を現代文に直したものですが、今起きている出来事は、誰にとっても現実問題です。その現実をどうとらえるかは自分の『心』次第なのです。仕事の問題も、LOMの現状も、自分自身の事も、自分の『心』の持ちようで見方は大きく変わるのです。心の持ちようが悲観的になり、当事者意識が無く他人事に思っていると、今起きている問題を愚痴ることはあっても、自らが率先して挑戦するという選択肢がなくなってしまいます。逆に、前向きに物事を見ていると、「変化はチャンスだ」と行動をおこし、他人の自分に対するちょっとした行為にも、感謝することが出来るのです。
我々メンバーの気持ちは常に前向きにするのは当然ですが、1年1年、時々の役割で心をしっかり切り替え、新しい発想や思考を廻らし、工夫を加え、自らが好んで変化を望み、すべての運動や活動に取り組み、行動を起こす。そのパワーの源となる活力や情熱が、青年会議所に関わったすべての市民を巻き込むことにつながり、市民全体のつながりある発信力をもってすると、おのずとふるさとを構成する要件を満たし、また市民がより深く運動や活動に参加することによって、郷土を想う心を育むのです。輝くLOMとは、まさに心の問題なのです。
《会員拡大は基本運動》
40歳定年制を敷く青年会議所にとって会員拡大は永遠のテーマとなります。我々の運動をより効果的に展開・発信する為には、マンパワー、さらなる会員の増強は必要不可欠であり、メンバー全員で取り組むべき大きな課題です。しかし逆に会員の減少が全国的に起きているのです。ですが、我々の運動や活動は何か間違ったことをやっていますか。世間の人は公の為に時間を費やすのが、そんなに嫌なのですか。いや必ず、自らを成長させ、まちを盛り上げる為に行動を起こしたい市民はいると思いますので、自らの足を使って、臆することなくJCに自信を持って、積極果敢に会員拡大をすることが必要です。
また本年は例年同様、まずは率先してまちのために我々が汗を流し背中を見せ、多くの人とのつながりをもって、切磋琢磨し自分を磨いて輝くJAYCEEとなり、またJCにしか出来ないことに取り組み、市民から絶対に必要不可欠で、魅力的で深く関わりたい青年団体へと進化させたいのです。
とは言え、対象者が入会するまでには様々な問題があります。仕事の事情、例会日の問題、会費の問題などがいつもネックになっているのですが、そんな一つひとつの問題を真摯に受け止め、志を同じうする者であれば誰でも入会できるような新しい仕組みを抜本的に検討する時が来ているのです。
そして「明るい豊かな社会」の実現に向けて、現役メンバーも研鑽を積み、自分自身も学びながら新入会員を育成していき、さらに大きな運動を発信するのです。
《北海道地区大会にむけて》
来年2013年には第62回北海道地区大会を恵庭で開催します。恵庭青年会議所41年の歴史の中で初めてのことです。こんな恵まれた機会に、改めてもう一度、5年後、10年後のまちの姿を真剣に考え、外から見た恵庭という着眼点で、魅力的なまちづくりとは如何なるものかを思案し、且つ検討し、全道のJAYCEEの期待と負託に応えたいと思います。そして恵庭市民とのつながりを本年は特に大切にし、来る大会をオール恵庭のつながりで盛り上げ、全道に恵庭大会のメッセージを力強く発信したいと思います。そして地元にいながら活動のステージが全道規模に変わるので、自分が今まで気付かなかった才能を発見させてくれる機会でもあり、可能性や限界に挑戦できる修練の場にもなります。また、恵庭のさまざまな人や物や魅力や文化や伝統を宣伝する最大の舞台でもありますので、新たな恵庭を発見する1年にする為にも、本年何をやるべきかを考え実行していきます。
《公益法人格について》
2009年の臨時総会で公益法人格取得を目指す事で決議しました。会員全員の合意ですので、公益法人格を取得することを目指しますが、移行期間は若干伸びたとはいえ、2013年11月までと差し迫っています。その為に今我々がしなければならない事は多岐に亘りますが、期間内に公益社団法人を取得することのみが目的にならないように注意しなければいけません。言うに及びませんが、我々が確固たる理念に基づいて行っている運動や活動に、制約や制限を受けては本末転倒なのです。そこは本質を見失わずに、また円滑にLOMが運営出来るように慎重で冷静に深く考慮し、いかなる事態をも想定し、持続可能な公益法人取得に向けて、前向きに思案し、かつ検討していきます。
《おわりに》
北海道には歴史が無いとよく言われます。それは和人の歴史がないだけであって、人間の歴史は、恵庭周辺に限っていえば今から約3,000年前からあるのです。郷土を想うときに、恵庭は充分すぎるほどの歴史や文化があるのです。
約3,000年前から人の営みが分かるカリンバ遺跡、約800年前からアイヌ人の間で語り継がれている義経伝説、140年前に中山久蔵が道内で初めて米の通年生産に成功し、地下資源としての島松軟石や盤尻の金鉱山跡地があり、札幌市にまで供給している清流漁川の水資源、札幌オリンピックで滑降競技を行った恵庭岳など、数多くあるのです。その素晴らしさ、価値の分かる人材を多く育て、次代へ受け継ぎ、誰もが自慢できる郷土にするのです。
「やっぱりここが僕の家」
子ども達がやがて大きくなり、
この街を離れることがあったとしても、
この輝かしい恵庭市が、
自分のふるさとであることに、
誰に対しても、
自信を持って言える、
そんな活動を、
まずは我々が郷土を想い、
そして、叶えたいと思います。
《スローガン》
「想いがつながる恵庭の未来(かたち)」
~郷土愛あふれるまちづくり~
《基本方針》
・いつまでも心に残るまちづくり。
・幅広い地域の人とのつながりづくり。
・子どもの夢があふれる青少年健全育成。
・郷土の歴史や文化の再考。
・持続可能でみんなが楽しめる郷土文化の立ち上げ。
・笑いの絶えないLOMの創造。
・ひたむきに行う会員拡大。
・地区大会準備を通じて恵庭の可能性への挑戦。








第29回えにわ雪んこ...
